2017年4月29日土曜日

【タイで最も熱い男たち】セック・チュムペー&ター・トーヂョーウォー:インディーから生まれた2人のスター

◆セック・チュムペー:แซ็ค ชุมแพ(左)、ター・トーヂョーウォー:ต้าร์ ตจว(右)

今、タイで一番熱い男2人を紹介したいと思います。

1人は「カムペーン(คำแพง)」という曲が、インディーでありながらYouTubeでの再生回数2億回(2017年4月現在)を超える大ヒットとなっているセック・チュムペー(แซ็ค ชุมแพ)。

もう1人は、こちらもインディーながら再生回数1億回を超えるヒットとなっている「ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ(แผ่นดินไหวในใจอ้าย)」を歌っているター・トーヂョーウォー(ต้าร์ ตจว)です。

どちらの曲も、今タイでコンサートに行けば99.99%誰かが歌っているほどの特大ヒットになっています。

特にセックの「カムペーン」にいたっては、バンコク中心部のショッピングモールでBGMで流れてくるほどの人気ぶり。彼はテレビにも引っ張りだこで、朝の情報番組にまで顔を出したほどです。その人気は一時期のゴン・フアイライを連想させられます。

そんな2人の人気っぷりを現場で確認してきましたので、お伝えしたいと思います。

まずはター・トーヂョーウォーから。

◆ター・トーヂョーウォー@タラート・キンコーン、バンプリー(2017年2月12日)



彼はご覧の通り、決して若い歌手ではありませんし、見た目もあまり華を感じない、普通のおじさんのような風貌なので、最初は何でこんな人がやたらと色んな所でコンサートをやってるんだろうと思っていました。

2月にバンプリーでペット・サハラットのコンサートがあったので、それを観に行ったのですが、その時ペットの前にステージに上がったのがター・トーヂョーウォーでした。

前述のように、自分は「誰、この人?」状態だったのですが、ターが登場するなり若い子たちがいっせいにステージ前に群がって来たのにはビックリしました。

しかし、その時歌っていた曲を聴いて「どこかで聴いた事あるなぁ」と思っていたら、それが今、大ヒットしている「ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ」でした。後々調べたら、自分が持っているMP3「イサーン・インディー」に入っていたという・・・w(【ディスク・ライブラリー#18】MP3「イサーン・インディー」)。

◆ター・トーヂョーウォー/ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ(2017年2月12日)


◆ター・トーヂョーウォー/ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ(心の中で起こった地震)



ただ、彼はこの歌でブレイクしたもののキャリアは長い人のようで、以前はアサニー・チョーティクン(アサニー&ワッサン)のレーベル「サハパープ・ドントリー(Music Union)」に所属していて、数曲オリジナル曲をリリースしていました。

多分、その頃にもターの名前は目にしていたかもしれませんが、全然意識してませんでしたので、いまいち記憶にありません。

しかし、曲を書いているのがワス・ハーウハーン先生というのは、なかなかの好待遇ですね。

◆ター・トーヂョーウォー/カーイ・マレーン・テン・ミア(虫を売って嫁を娶って)



◆ター・トーヂョーウォー/ナックローン・インディー(インディーの歌手)


サハパープ・ドントリーを抜けた後、再びインディーに戻り、今回のブレイクとなる訳ですが、キャリアがあるだけあって歌や演奏もこなれていて、途中ギターをピンに持ち替えて演奏する場面もあり、なかなか見応えのあるステージを披露してくれました。

ちなみにトーヂョーウォーというのは「タン・ヂャンワット(ต่างจังหวัด)」の略で、(首都以外の)地方という意味です。



◆ター・トーヂョーウォー/ルア・コーン・チャート、シ・カートヂャイ(2017年4月に公開された新曲)



そして、もう1人の熱い男のセック・チュムペーですが、彼は名前の通り、コンケーンのチュムペー出身の青年です。

昨年末頃から「カムペーン」が盛り上がり始め、今年に入りバンコクでのコンサートが増え始めていたセックですが、なかなか観に行くタイミングが合わず、ようやく本人に会えたのが3月31日のテレビ番組の収録ででした。

◆Ch7のテレビ番組「ギック・ドゥー(กิ๊กดู๋)」の収録@Workpoint Studioにて。共演のラムヤイ・ハイトーンカムと。(2017年3月31日)



初めて会うセック本人は細身の長身で、予想以上の好青年でした。

年齢に関する情報が無かったので、本人に直接確認した所、現在22歳との事。若いですね。

ちなみに、「カムペーン」というのはイサーン語で「最愛の人」という意味です。

◆セック・チュムペー/カムペーン



テレビでの収録でも生歌を1曲披露してくれましたが、パワフルな歌声が素晴らしかったです。

ただ、1曲だけでは歌手としてのポテンシャルは捉え難いのが事実。という訳で、同じ日にバンコクで彼が出演するコンサートがありましたので、観に行ってきました。

この日はセックの他にアーム・チュティマーとオーイローも出演するという事で、気分的にもどことなくリラックスした雰囲気。

舞台に上がる前のセックに挨拶すると、昼間会ったばかりという事もあって、さすがに憶えていてくれてました。

◆セック・チュムペー@サパーディン(2017年3月31日)




改めて生バンドをバックに聴くセックの歌声は、テレビ局で聴いた時よりもパワフルさが増しているように思いましたね。

彼はとにかく前のめりに歌うタイプなので、観ている方もグイグイ引き込まれていきます。

それにハンサムで笑顔でのファン対応となると、女性が夢中になるのも無理ありません。この日も終始、黄色い声援が飛び交っていました。

◆セック・チュムペー@サパーディン-1(2017年3月31日)



セックももちろんター・トーヂョーウォーの歌を歌っています。

本家のマイルドな感じの歌とはまた違った迫力のある歌い方で、同じ曲がまた違ったイメージに聴こえてきますね。

◆セック・チュムペー/ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ@サパーディン-2(2017年3月31日)



モーラム系を歌わせてもなかなかのもの。

ただ、今回は歌謡モーラムだけだったので、追々は本格的なモーラムも期待したいものです。

◆セック・チュムペー/グラープ・デーン~30・ヤン・ヂェウ~メーハーン・マハー・サネー@サパーディン-3(2017年3月31日)



もしかしたら、セックは一発屋で終わるかもしれませんが、ステージでは人を引きつけられる力は充分あるので、ステージ歌手としての息は長く続くかもしれません。

曲が売れているだけでなく、歌手・ミュージシャンとしてのポテンシャルも高いこの2人。

しばらくはコンサートに引っ張りだこの状態が続きそうです。

2017年4月26日水曜日

【ピックアップ・シンガー】正統モーラムを受け継ぐタッサポーン・トーンヂャンの底力を見た日

◆タッサポーン・トーンヂャン(ทัศพร ทองจันทร์)

モーラムという「言葉」は頻繁に聞く事ができても、モーラムという「音楽」を聴くことは難しくなっている、昨今のタイ音楽事情。

モーラム楽団のコンサートに行っても、歌われているのはほとんどがルークトゥンであったりポップスであったりするというのが実情です。

理由は単純で、その方が客にウケるからなんですが・・・。それと、モーラムは鍛錬が必要なので、歌える人が限られているというのもあります。でも、それではモーラムが好きな人間としては、それではちょっと寂しい。

そんな不満を少し解消してくれたのが、3月に観たタッサポーン・トーンヂャンのコンサートでした。

昨年(2016年)10月13日以降、それまで一緒に行動していたゴン・フアイライとは別々に活動するようになり(事務所は同じなので、仲違いした訳ではありません)、歌う場がすっかり少なくなってしまっていたタッサポーン。

コンサートが行われた3月20日は、自分としては翌日からイサーン~ラオスへ行かなければならなかったので、どこにも行きたくなかったのですが、彼女の単独コンサートを観るのは1年ぶりという事もありましたので、無理やり調整しました。

しかも場所がラヨーン。この地域は経験上、行けても帰りのタクシーなどがない場所であることは充分知っていたのでかなり躊躇しましたが、帰りはタッサポーンに送ってもらえるようお願いして、ラヨーンへと向かいました。

◆タッサポーンと当日ゲストだった同じ事務所Sound Me Heangの後輩歌手、モス・ラッサミー(左)。


1月にラヨーンに行った際に利用した、バンナーのロットゥー乗り場が警察により移転させられて、行くのにもすったもんだしてしまいましたが、何とかタッサポーン達がステージに上がる直前に到着することが出来ました。

1年前オームヤイで彼女のコンサートを観た時はバックはカラオケでしたが、今回はバックバンドを引き連れてのステージ。それだけでも期待が高まります。

あまりに久しぶりなので、どんなプログラムを組んでいるのか皆目見当が付きませんでしたが、冒頭のタッサポーンの一節に、それまでの苦労と次の日からの事は一気に吹き飛びましたね。

それが1本目の動画なんですが、これこそモーラム歌手タッサポーン・トーンヂャンの真の実力と思わせられる、見事な歌、そしてラムでした。

こういうのはなかなか、カラオケをバックにしたコンサートでは聴く事ができませんからね。

◆タッサポーン・トーンヂャン/ラムプルーン・ワーンヂャオポー・パラーンチャイ@ラヨーン-1(2017年3月20日)



間髪入れず、自身のオリジナル曲「キットホート・プーラーン・コン」からのモーラムと、畳み掛けるようなモーラム・メドレー。これを聴く事ができただけでも、ラヨーンまで来た甲斐があったというものです。





◆タッサポーン・トーンヂャン/モーラム・メドレー@ラヨーン-2(2017年3月20日)



ゴンと活動していたときは、ゴンの休憩を兼ねての場つなぎ的役割だったので、モーラムはおろかオリジナルの曲も歌っていなかったタッサポーンでしたが、ようやく自分がメインのステージが出来るという喜びが、コンサートの間溢れ出ていたように思います。

それと、やっぱり彼女が一番歌いたいのは流行曲のカヴァーではなく、師であるカムグン・トーンヂャンから学んだモーラムだと思うんですよね。

ただ、今のタイでそれが出来る場が無いのが残念な所です。

また、この日もう一つの大きな目的だったので、彼女のオリジナル曲「タウェン・ボ・クーイ・トゥア」を聴くことでした。

昨年この曲がリリースされて以降、この歌をステージで聴くタイミングを逸してしまっていたので、この日はなんとしてでもビデオに収めたいと意気込んでいました。

それが達成できただけでも意味があった、今回のラヨーン行きでした。

◆タッサポーン・トーンヂャン/タウェン・ボ・クーイ・トゥア@ラヨーン-3(2017年3月20日)



なお、この日コンサートの合間に新曲が間もなくリリースされることを話していたタッサポーンですが、その曲「ポー・シ・ペン・フェーン・ダイ・ボ」は4月9日にYouTubeで公開されました。

前作とはまた違った、アップテンポの曲になっていて、それまでの曲では聴く事が出来なかったタッサポーンの新たな一面が垣間見れる曲になっています。

ちなみに、アレンジを担当しているのはサワット・サーラカーム先生です。

◆タッサポーン・トーヂャン/ポー・シ・ペン・フェーン・ダイ・ボ



間違いなく実力はあるのに、それを発揮できる場が無いというのは、何とも歯がゆい状態です。

タイでたくさんの歌手のコンサートを観ていると、長いスパンでフォロー出来る歌手は限られてきます。それは趣味や趣向もありますが、自分にとってタッサポーンは長く追いかけて来た数少ない、大切な存在の歌手の1人です。

その彼女が単に人気が出るというだけでなく、真の力が発揮できる場が早く出来る事を願ってやみません。

2017年4月16日日曜日

【ディスク・ライブラリー#18】MP3「イサーン・インディー」:タイ音楽の新しい世界へ導いてくれるコンピレーション

【Artist】รวมศิลปิน(Various Artist)

【Title】อีสานอินดี้(イサーン・インディー)

【Release Date】22 ธ.ค. 2559(2016年12月22日)



今、タイで人気のある曲の多くはインディーから生まれている事は、このブログで何度か書かせていただいていますし、タイランドハイパーリンクスのコラムでも書かせていただきました。

◆音楽天国タイランド「第28回 ヒット曲はインディーズから生まれる。今、そしてこれからのルークトゥンモーラム注目の歌手たち」

ただ、インディーの歌手達のほとんどが曲単位でYouTubeに公開したり、ダウンロード配信だけをしていたりと、CDなどをリリースしていませんので、タイ国外にお住まいの方には状況がいまいち分かり難いかもしれません。

そんなインディーの人気曲を中心にまとめたMP3が発売されました。タイトルはずばり「イサーン・インディー」。イサーンのインディーシーンが一望できるアルバムになっています。

◆「イサーン・インディー」収録曲。


このインディーシーンを分かりやすく伝えるとするならば、日本でもかつて一世を風靡したフォークソングのシーンに近いのではないでしょうか。つまり、タイの歌手達も自分の手で自分の音楽を作るようになってきたという事です。

日本では当たり前かも知れませんが、タイではまだシンガーソングライターというのは少なく、歌う人と曲や詞を作る人というのは基本的に別です。そうなると自分の歌いたい歌が100%歌えないという事になってしまいます。

そういう状況がこのインディー歌手たちの台頭で少しずつ変わってきた。インディーシーンというのはそんなルークトゥン・モーラムの重要な過渡期であると言えます。

そのインディーのキーパーソンたちの歌が収められたのが、このMP3です。

しかし、全部が全部最新の曲ではなく、50曲入りという事とGrammy Goldから発売されているという事もあって、少し前のGrammyの若手イサーン歌手の曲なども含まれています。

なので、ここでは全部の曲ではなく、現在のインディーシーンを理解する上で特に重要な歌手のみを取り上げたいと思います。

まずは、イサーンインディーの中でも特に重要な歌手であるアーム・チュティマーです。

彼女は女性であるというだけでなく、まだ17歳(アディート・クーイ・パンを作った時は16歳)という意味でも、その存在を知った時は衝撃を受けました。

さらにそのソングライティングのセンスを歌唱力も、沢山いるインディー歌手の中でもダントツと言えます。今、大ヒット中のラムヤイ・ハイトーンカムの曲「プーサオ・カーロッ」もアームの手によるものです。

一歌手としてだけでなく、作家としても将来楽しみな存在です。

【Tr.1】อาม ชุติมา(アーム・チュティマー)/อดีตเคยพัง(アディート・クーイ・パン)


次のイート・スパゴンについては、詳細な事は分からないのですが、この「モーン・バイ・ガオ(古びた枕)」のYouTube再生回数は、4/16の時点で7000万回に達しようとしています。

ギター1本のみをバックに歌われる、最愛の人を亡くした悲しみを歌っているこの歌。イサーン・インディーの中でも、名曲の1つと言えるでしょう。

【Tr.2】อี๊ด ศุภกร(イート・スパゴン)/หมอนใบเก่า(モーン・バイ・ガオ)


メー・ヂラーポンについても、まだ詳細が分からないのですが、この歌「プーサオ・ガオ(かつての恋人)」は曲の良さもあり、人気の高い曲です。

1月下旬に彼女が生で歌うのを聴く機会があったのですが、歌手としてのメーはまだまだ未知数といった所でしょうか。

【Tr.3】เมย์ จิราพร(メー・ヂラーポン)/ผู้สาวเก่า(プーサオ・ガオ)


ビックバイク・サーイラム(愛称:アーム)は、イサーン・インディーの歌手の中でも特に注目している一人です。

彼に最初に会ったのは1年近く前になりますが、その頃から結構ファンも多かったので、この人気もうなずけます。

歌詞ヴァージョンの動画は既に9000万回を超え、まもなく1億回に達しようという勢いです。

ここでは2月にランシットで行われた彼のライブ映像を。

【Tr.5】บิ๊กไบค์ สายลำ(ビックバイク・サーイラム)/กะฮักคือเก่า(ガ・ハック・クー・ガオ)



「クー・フェート」というのはタイ語で双子を意味する言葉です。

クー・フェート・オーエーはオーとエー2人の男性の双子デュオの事で、MVをご覧いただいてもお分かりのように、2人ともそっくりです(どちらがオーで、どちらがエーかは分かりませんw)。

顔だけでなく声もそっくりで、2人で交互に歌っているのですが、音だけ聴いているといつ変わったのか全く分かりませんね。

【Tr.6】คู่แฝดโอเอ(クー・フェート・オーエー)/ไม้อ่อยไฟ(マイ・オーイ・ファイ)



ボーイ・パノムプライの曲「ステータス・トゥーク・ティン」は映画「タイ・バーン・ザ・シリーズ」の為に作られた曲です。

歌詞ヴァージョンの動画は既に1億回の再生回数を超えています。

ただ、このボーイ、あまりコンサートなどはやっていないようで、バンコクでもまだお目にかかったことはありません。この曲だけでなく、他にも良い曲を歌っていますし、歌もなかなかなものなので、ぜひもっと積極的にコンサートをやってほしいですね。

【Tr.9】บอย พนมไพร(ボーイ・パノムプライ)/สเตตัสถืกถิ่ม(ステータス・トゥーク・ティン)



イサーン・インディーの歌手の中でもいち早くバンコク進出を遂げたのが、次のター・トーヂョーウォーです(ターは愛称、トーヂョーウォーは県外という意味)。

2月にペット・サハラットとの共演コンサートがあったのですが、実はその時まで誰だか理解していなくて、意外に人気あるんだなぁと人事のように思っていました(笑)。意外どころじゃなくて、大人気だったんですね。コンサートでも色んな歌手に歌われている定番曲になっています。

オフィシャルの動画は4/16現在で再生回数9500万回まできていますので、1億回に達するのも時間の問題でしょう。

この動画はその2月の時のライブです。

【Tr.10】ต้าร์ ตจว(ター・トーヂョーウォー)/แผ่นดินไหวในใจอ้าย(ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ)


マッキーはサワット・サーラカム先生に師事していた歌手で、偶然サワット先生のスタジオ兼ご自宅で会って以降、なんどか顔を合わせたことがあります。

3月にもラヨーンでのタッサポーン・トーンヂャンのコンサートに来ていて、その時バックステージでは歌わないと言っていたのですが、結局ステージに上がり、しかも一番声援が多かったという、甘いマスク故に女性には非常に人気の高い歌手です。

ただ、イケメンというだけでなく音楽的な才能もあって、この歌はマッキー自身の作詞・作曲の曲です。アレンジはサワット先生。

【Tr.14】แม็คกี้ ฤทธิศร(マッキー・ルッティソン)/สิบ่ขวางทางฮัก(シ・ボ・クワーン・ターン・ハック)



それまでメジャーにしか意識が行っていなかった自分が、インディーに注目するようになったキッカケを作ってくれた歌手がこのダーオ・チャリターです。

最近はバンコクに来る機会も減ってしまい、しばらく会うことが出来ていませんが(まだ学生なので仕方ありません)、今でもダーオの歌を聴く度にその才能に聴き惚れますね。

この歌はペット・サハラットの曲のカヴァーです。

【Tr.23】ดาว ชลิตา(ダーオ・チャリター)/ฆ่าให้ตายน้องกะฮัก(カー・ハイ・ターイ・ノーン・ガ・ハック)



最後にダーオと同じく、自分の意識を大きく変えさせてくれた歌手の1人、タッサポーン・トーンヂャンです。

今にして思えば、ダーオとタッサポーンの2人がドークヂャーン・バントゥンシンというモーラム楽団で歌っていたなんて、信じられませんね。

このMP3に収録された「タウェン・ボ・クーイ・トゥア(太陽は裏切らない)」はとても良い曲でしたし、彼女も自信があったようですが、残念ながら思ったほどの結果は出なかったようです。

そんな訳で、今度はアップテンポの新曲を公開したばかりのタッサポーン。

実力は間違いないので、あとは良い曲に巡り会えるかが彼女にとっての課題ではないでしょうか。

動画は3月20日、ラヨーンでのタッサポーンのコンサートからのものです。

【Tr.36】ทัศพร ทองจันทร์(タッサポーン・トーンヂャン)/ตะเว็นบ่เคยตั๋ว(タウェン・ボ・クーイ・トゥア)



本当は今大ヒット中の「カム・ペーン」(セック・チュムペー)と「プーサオ・カーロッ」が入っていれば完璧だったのですが、それは間もなく発売される「イサーン・インディー2」に収録されているので、ご安心を。

インディー歌手台頭は、歌手自身が自分で曲を作るようになった(全部が全部ではありませんが)というだけでなく、メジャー主体のルークトゥンモーラム業界に大きな変化をもたらしたという意味でも、重要な出来事です。

この状況はこれからもしばらく続くものと思われます。

2017年4月15日土曜日

【モーラム実験室】伝統回帰的近未来モーラム・グループ:Toom Turn Molam Group

◆Toom Turn Molam Group@Studio Lam(29 Mar. 2017)

「モーラム」と一言で言っても、その定義は難しいです。

本来は「ラム(語り)の達人」という意味で、音楽のジャンルを指す言葉ではないのですが、今は一般的にジャンルをあらわす言葉になっていますし、ラムが無くてもモーラムといったりしますし、タイ人はモーラム楽団の事を簡単に「モーラム」と言っていたりするので、外国人の我々にはどこからどこまでがモーラムなのか、非常に分かり難くなっている状態です。

モーラムで重要なのは「語り」の部分であると自分は思っています。ただ、モーラムを形成する上で語りと同じくらいに重要なのが、ケーンとピンという楽器です。「語り」を抜いてもケーンとピンが入っていれば、それもモーラムとする考え方もあります。例えばThe Paradise Bangkok Molam International Bandなどがそうです。

その考え方を受け継いだグループがまた新たに出て来ました。それが先日ライブを観て来たToom Turn Molam Groupです。

彼らは基本的にイサーンの伝統楽器を主体に、ベース以外は出来るだけ電気楽器は使わない編成で、イサーンの伝統曲を演奏するグループです。


そこには語りを担当するモーラムはいませんが、音楽としての「モーラム」の真髄は間違いなくありました。

そして、単純に伝統的な演奏を再現するだけでなく、21世紀という時代を生きている人間のセンスが加わえて、また新しいモーラムを作り出そうとしているのが、このグループを注目すべきポイントだと言えるでしょう。







ライブ当日はタイ人と外国人半々くらいのお客が訪れ、マスコミの取材も受けるなどしていましたので、タイ国内でも注目している所はあるようです。

演奏は最初ぎこちなさは感じられたものの、時間が経つにつれメンバー同士の息も合ってきたようで、後半はかなり熱のこもった演奏で、観客も盛り上がり、最後は予定外のアンコールまで受けていました。







彼らはまだ20代を中心とした若いメンバーで構成されているようですので、これから様々な演奏経験を積み重ねていって、この先さらに進化したモーラムになる可能性は充分にあります。

そんな、伝統を踏まえつつも未来を感じさせるユニークなグループが誕生したと思います。

2017年4月14日金曜日

【モーラム万華鏡#9】モーラムの絶対的スター、マイタイ・フアヂャイシン@プラプラデーン・アーケード

◆ไหมไทย หัวใจศิลป์@พระประแดงอาเขต(19 มี.ค. 2560)

マイタイのライブはこれまで何度も観ているのですが、楽団で今回のような完全な形でのコンサートというのは、これを含めてまだ2回くらいしかありません。

しかし、観るたびにその存在感には圧倒されますね。それに完成度もこれまで観た中でも最高かもと思うくらい、このプラプラデーン・アーケードでのコンサートは素晴らしかったです。

また、今回マイタイのコンサートを観て改めて思ったのが、楽団のクオリティーの高さです。歌手・ダンサー・音響・照明・映像全てが完璧と思えるほど充実していました。

特に歌手・ダンサーは綺麗どころも多く、カメラのシャッターを押す手が止まりませんでしたw

それと、これは毎回思うのですが、マイタイのコンサートはファンが熱い!本当に熱心なファンが多く集まるので、その辺にも圧倒されます。











マイタイのコンサートを観ていていつも思うのが、彼の音楽はもはやジャンルを超えたマイタイオリジナルの音楽になっているという事です。

それはマイタイの踊りなども含めてという意味なのですが、だれにもマネのできない(モノマネをするという意味ではなく)One&Onlyの世界観に到達している気がしますね。

今期のマイタイのコンサートは、最初マイタイが出てきてプミポン前国王を追悼する歌から始まり、その後楽団のメンバーが入れ替わり2時間ほど歌い、その後ようやくマイタイ本人が登場するという構成でした。

それと歌う曲は、最近リリースされた自身のレーベルからの2作目のアルバムからの曲を中心に、すべてマイタイのこれまでのオリジナル曲になっていました。

他の歌手は大抵カヴァー曲なども歌うのですが、マイタイの場合はカヴァーは一切歌わないんです。その辺もカリスマ的人気を誇る理由かもしれませんね。












◆マイタイ・フアヂャイシン@プラプラデーン・アーケード-1(2017年3月19日)



◆マイタイ・フアヂャイシン@プラプラデーン・アーケード-2(2017年3月19日)



◆マイタイ・フアヂャイシン@プラプラデーン・アーケード-3(2017年3月19日)



何度観ても飽きないマイタイワールド。

機会がある限り、これからも何度でも通いたいと思います。