2017年4月16日日曜日

【ディスク・ライブラリー#18】MP3「イサーン・インディー」:タイ音楽の新しい世界へ導いてくれるコンピレーション

【Artist】รวมศิลปิน(Various Artist)

【Title】อีสานอินดี้(イサーン・インディー)

【Release Date】22 ธ.ค. 2559(2016年12月22日)



今、タイで人気のある曲の多くはインディーから生まれている事は、このブログで何度か書かせていただいていますし、タイランドハイパーリンクスのコラムでも書かせていただきました。

◆音楽天国タイランド「第28回 ヒット曲はインディーズから生まれる。今、そしてこれからのルークトゥンモーラム注目の歌手たち」

ただ、インディーの歌手達のほとんどが曲単位でYouTubeに公開したり、ダウンロード配信だけをしていたりと、CDなどをリリースしていませんので、タイ国外にお住まいの方には状況がいまいち分かり難いかもしれません。

そんなインディーの人気曲を中心にまとめたMP3が発売されました。タイトルはずばり「イサーン・インディー」。イサーンのインディーシーンが一望できるアルバムになっています。

◆「イサーン・インディー」収録曲。


このインディーシーンを分かりやすく伝えるとするならば、日本でもかつて一世を風靡したフォークソングのシーンに近いのではないでしょうか。つまり、タイの歌手達も自分の手で自分の音楽を作るようになってきたという事です。

日本では当たり前かも知れませんが、タイではまだシンガーソングライターというのは少なく、歌う人と曲や詞を作る人というのは基本的に別です。そうなると自分の歌いたい歌が100%歌えないという事になってしまいます。

そういう状況がこのインディー歌手たちの台頭で少しずつ変わってきた。インディーシーンというのはそんなルークトゥン・モーラムの重要な過渡期であると言えます。

そのインディーのキーパーソンたちの歌が収められたのが、このMP3です。

しかし、全部が全部最新の曲ではなく、50曲入りという事とGrammy Goldから発売されているという事もあって、少し前のGrammyの若手イサーン歌手の曲なども含まれています。

なので、ここでは全部の曲ではなく、現在のインディーシーンを理解する上で特に重要な歌手のみを取り上げたいと思います。

まずは、イサーンインディーの中でも特に重要な歌手であるアーム・チュティマーです。

彼女は女性であるというだけでなく、まだ17歳(アディート・クーイ・パンを作った時は16歳)という意味でも、その存在を知った時は衝撃を受けました。

さらにそのソングライティングのセンスを歌唱力も、沢山いるインディー歌手の中でもダントツと言えます。今、大ヒット中のラムヤイ・ハイトーンカムの曲「プーサオ・カーロッ」もアームの手によるものです。

一歌手としてだけでなく、作家としても将来楽しみな存在です。

【Tr.1】อาม ชุติมา(アーム・チュティマー)/อดีตเคยพัง(アディート・クーイ・パン)


次のイート・スパゴンについては、詳細な事は分からないのですが、この「モーン・バイ・ガオ(古びた枕)」のYouTube再生回数は、4/16の時点で7000万回に達しようとしています。

ギター1本のみをバックに歌われる、最愛の人を亡くした悲しみを歌っているこの歌。イサーン・インディーの中でも、名曲の1つと言えるでしょう。

【Tr.2】อี๊ด ศุภกร(イート・スパゴン)/หมอนใบเก่า(モーン・バイ・ガオ)


メー・ヂラーポンについても、まだ詳細が分からないのですが、この歌「プーサオ・ガオ(かつての恋人)」は曲の良さもあり、人気の高い曲です。

1月下旬に彼女が生で歌うのを聴く機会があったのですが、歌手としてのメーはまだまだ未知数といった所でしょうか。

【Tr.3】เมย์ จิราพร(メー・ヂラーポン)/ผู้สาวเก่า(プーサオ・ガオ)


ビックバイク・サーイラム(愛称:アーム)は、イサーン・インディーの歌手の中でも特に注目している一人です。

彼に最初に会ったのは1年近く前になりますが、その頃から結構ファンも多かったので、この人気もうなずけます。

歌詞ヴァージョンの動画は既に9000万回を超え、まもなく1億回に達しようという勢いです。

ここでは2月にランシットで行われた彼のライブ映像を。

【Tr.5】บิ๊กไบค์ สายลำ(ビックバイク・サーイラム)/กะฮักคือเก่า(ガ・ハック・クー・ガオ)



「クー・フェート」というのはタイ語で双子を意味する言葉です。

クー・フェート・オーエーはオーとエー2人の男性の双子デュオの事で、MVをご覧いただいてもお分かりのように、2人ともそっくりです(どちらがオーで、どちらがエーかは分かりませんw)。

顔だけでなく声もそっくりで、2人で交互に歌っているのですが、音だけ聴いているといつ変わったのか全く分かりませんね。

【Tr.6】คู่แฝดโอเอ(クー・フェート・オーエー)/ไม้อ่อยไฟ(マイ・オーイ・ファイ)



ボーイ・パノムプライの曲「ステータス・トゥーク・ティン」は映画「タイ・バーン・ザ・シリーズ」の為に作られた曲です。

歌詞ヴァージョンの動画は既に1億回の再生回数を超えています。

ただ、このボーイ、あまりコンサートなどはやっていないようで、バンコクでもまだお目にかかったことはありません。この曲だけでなく、他にも良い曲を歌っていますし、歌もなかなかなものなので、ぜひもっと積極的にコンサートをやってほしいですね。

【Tr.9】บอย พนมไพร(ボーイ・パノムプライ)/สเตตัสถืกถิ่ม(ステータス・トゥーク・ティン)



イサーン・インディーの歌手の中でもいち早くバンコク進出を遂げたのが、次のター・トーヂョーウォーです(ターは愛称、トーヂョーウォーは県外という意味)。

2月にペット・サハラットとの共演コンサートがあったのですが、実はその時まで誰だか理解していなくて、意外に人気あるんだなぁと人事のように思っていました(笑)。意外どころじゃなくて、大人気だったんですね。コンサートでも色んな歌手に歌われている定番曲になっています。

オフィシャルの動画は4/16現在で再生回数9500万回まできていますので、1億回に達するのも時間の問題でしょう。

この動画はその2月の時のライブです。

【Tr.10】ต้าร์ ตจว(ター・トーヂョーウォー)/แผ่นดินไหวในใจอ้าย(ペンディンワイ・ナイ・ヂャイ・アーイ)


マッキーはサワット・サーラカム先生に師事していた歌手で、偶然サワット先生のスタジオ兼ご自宅で会って以降、なんどか顔を合わせたことがあります。

3月にもラヨーンでのタッサポーン・トーンヂャンのコンサートに来ていて、その時バックステージでは歌わないと言っていたのですが、結局ステージに上がり、しかも一番声援が多かったという、甘いマスク故に女性には非常に人気の高い歌手です。

ただ、イケメンというだけでなく音楽的な才能もあって、この歌はマッキー自身の作詞・作曲の曲です。アレンジはサワット先生。

【Tr.14】แม็คกี้ ฤทธิศร(マッキー・ルッティソン)/สิบ่ขวางทางฮัก(シ・ボ・クワーン・ターン・ハック)



それまでメジャーにしか意識が行っていなかった自分が、インディーに注目するようになったキッカケを作ってくれた歌手がこのダーオ・チャリターです。

最近はバンコクに来る機会も減ってしまい、しばらく会うことが出来ていませんが(まだ学生なので仕方ありません)、今でもダーオの歌を聴く度にその才能に聴き惚れますね。

この歌はペット・サハラットの曲のカヴァーです。

【Tr.23】ดาว ชลิตา(ダーオ・チャリター)/ฆ่าให้ตายน้องกะฮัก(カー・ハイ・ターイ・ノーン・ガ・ハック)



最後にダーオと同じく、自分の意識を大きく変えさせてくれた歌手の1人、タッサポーン・トーンヂャンです。

今にして思えば、ダーオとタッサポーンの2人がドークヂャーン・バントゥンシンというモーラム楽団で歌っていたなんて、信じられませんね。

このMP3に収録された「タウェン・ボ・クーイ・トゥア(太陽は裏切らない)」はとても良い曲でしたし、彼女も自信があったようですが、残念ながら思ったほどの結果は出なかったようです。

そんな訳で、今度はアップテンポの新曲を公開したばかりのタッサポーン。

実力は間違いないので、あとは良い曲に巡り会えるかが彼女にとっての課題ではないでしょうか。

動画は3月20日、ラヨーンでのタッサポーンのコンサートからのものです。

【Tr.36】ทัศพร ทองจันทร์(タッサポーン・トーンヂャン)/ตะเว็นบ่เคยตั๋ว(タウェン・ボ・クーイ・トゥア)



本当は今大ヒット中の「カム・ペーン」(セック・チュムペー)と「プーサオ・カーロッ」が入っていれば完璧だったのですが、それは間もなく発売される「イサーン・インディー2」に収録されているので、ご安心を。

インディー歌手台頭は、歌手自身が自分で曲を作るようになった(全部が全部ではありませんが)というだけでなく、メジャー主体のルークトゥンモーラム業界に大きな変化をもたらしたという意味でも、重要な出来事です。

この状況はこれからもしばらく続くものと思われます。

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